オークション
壊れる音
いつもの服屋に顔を出すと、店員さんが驚いたようにあたしを見て来た。


「こんにちは……」


おずおずとそう声をかけると、店員さんはハッと我に返り「あなた、すごいじゃない!!」と、突然手を握りしめられてしまった。


驚いて目を白黒させていると「ごめんごめん、まさかまたこのお店に来てくれるとは思ってなくて」と、ほほ笑んだ。


「今日も、オークションがあるんですよね?」


そう聞くと「あぁ、そうみたいね」と、興味なさそうに頷いた。


「でもあなたはオークションには参加しないんでしょう? もう十分有名人だもんねぇ」


「いえ。見るだけ見てみたくて来ました」


あたしはそう返事をすると、店員さんは大きな目を更に大きくさせてあたしを見た。


「そうなの……?」


「はい」


あたしは頷く。


「あのオークションを見るだけみてみるなんて、珍しいわね」


「珍しいですか?」


「オークションの事を何も知らない子なら、好奇心だけで参加する。だけど大抵、もう二度と来たくないと思いながら帰って行くわよ」


そう言われ、あたしは初めてオークションに参加した時の事を思い出していた。
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