オークション
アイスを食べたばかりだというのに体は燃えるように熱く、言葉を必死で探しているのに頭の中は真っ白だった。


「……買ったの!?」


答えられずにいると、エレナが怒鳴るようにそう聞いて来た。


オークションで才能を買う事に嫌悪感を抱いているエレナだ。


ここで本当の事を言えば幻滅させるだけだった。


けれど、真っ白な頭じゃいい言い訳も浮かばなかった。


あたしはただエレナを見ているだけだった。


「もしかして、マラソンでトップだった時も……?」


そう聞かれて、あたしはエレナが本気で喜んでくれていたことを思い出した。


ゴール地点で待ち構えて手を振ってくれたエレナ。


でも……でも……!


「オークションで買うのがダメだって、誰が言ったの?」


震える声でそう言っていた。


エレナは大好きな親友だ。


これから先もずっと一緒。


そう、思っていた。


「藍那……」


エレナが睨むように見て来る。


だからあたしもエレナを睨み返していた。
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