オークション
モンピー
あたしの名前は清井エレナ。


だけど、オークション会場の中にいるときだけは『モンピー』と名乗った。


みんなを楽しませるピエロメイクに、厚底のシークレットブーツを履いて、いつもよりワントーン低い声でマイクに向かう。


最初、親友の藍那がオークションに興味を持ち会場へ行ってみようと言い出した時、正直焦った。


オークション開始までに藍那と別れ、モンピーとして仕事につく。


その予定が台無しになったからだ。


しかし、あの時はあたしと体型が似ている細身の男性スタッフが、急きょモンピーを演じてくれていたのだ。


あたしは控室で台本を読み、「ふぅ……」と、息を吐き出した。


オークション会場が数か月に1度移動するのはいつものことだった。


藍那のように次から次へと才能を落札する困ったお客さんは必ずいて、本当に才能が必要な人へと商品が行きわたらなくなるからだ。


あたしは立ちあがり、控室の隅っこに置かれている台へと移動した。


移動式の台の上には赤い布で覆われた今日の商品が入っている。
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