オークション
☆☆☆

エレナを送り届けて自分の家についた時、ちょうど夕飯の時刻だった。


だけど食欲なんてないし、何かをする気力もなかった。


あたしはキッチンで夕飯を作っているお母さんに何も言わず、そのまま自室へ入りベッドに横になった。


ようやく体が少し楽になったように感じられる。


好きな音楽を大きな音で流しながらイヤホンをした。


今日見たこと。


聞いたことを思い出さないように、歌詞とメロディーに集中する。


大丈夫。


あれは夢だったんだ。


明日になれば全部消えてなくなっている。


エレナもあたしも藤吉さんも、いつも通りになっている。


自分に言い聞かせながらも、手の震えだけはどうしても止まらなかったのだった。
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