オークション
それもそうだ。


オークションを開催しているのはごく少人数の会社で、メールアドレスだけを使わせてもらっていると考えれば、サイト側はどうとでも言い逃れができる。


サイトとオークションを開催している会社の間に何社もの会社を経由しているとすれば、足もつきにくい。


そうやって周囲の目を欺きながらオークションは開催されているのかもしれない。


「あたし、もっと別の事が聞きたい」


今まで黙っていたエレナがそう言った。


「なに? 知ってる事ならなんでも話すよ?」


「オークションで買った《画家の手》って……」


そこまで言って、口を閉じるエレナ。


しかし、それだけで十分に伝わることだった。


「あぁ、これ?」


藤吉さんは自分の両手をかがげるようにして見せて来た。


手首と手の色も違い、明らかにおかしい状態だ。


「それって……どういうこと?」


エレナがそう聞くと、藤吉さんはどこか自信に満ちた表情でほほ笑んだ。


「《画家の手》っていうのはね、言い方を変えれば《画家の才能》って事なんだよ」


その瞬間、あたしは今朝見た藤吉さんの絵を思い出していた。


以前見た時よりも格段にレベルアップしている絵。
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