オークション
☆☆☆

朝になると気分は随分と落ち着いてきていた。


昨日の映像を思い出すとまだ吐き気がするけれど、それであの少年の人生が好転したのだろうと考えると吐き気は和らいだ。


いらないものを売り、欲しい人が買う。


そんなの当たり前だ。


昨日はそれが脳味噌だったというだけだ。


自分自身にそう言い聞かせていた。


どうにか朝食を胃に入れて、あたしは足早に家を出た。


外の空気を吸うと気分が変わり、ゆっくり歩いて学校へ向かう。


普段より少し遠回りをして綺麗な花を育てている家の前を通り、小川を泳いでいる魚を見た。


大丈夫。


友達とあっても笑顔でいられる。


綺麗なものを目に焼き付けて、あたしはスッと姿勢を正した。


オークションに行った事は絶対にバレてはいけない。


そう思い、学校の校門をくぐったのだった。
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