神恋~水神様に恋をした~
運の悪い事にヤタガラスさんは不在だった。
代わりに、念のため書いておいた置き手紙と一緒に縁側に置いておく。
軒先だったら誰かに取られちゃうかも知れないし。
一番不在していて欲しいヤタガラスさんの隣人はバッチリ家に居て。
そこに住んでいるのは、綺麗な若い女の人と、同じくらい若い男の人が住んでいる家だった。
(ふ、夫婦なのかな…?)
この妖怪は、一体何の妖怪何だろう…。
これといって特徴がないしなぁ。
強いて言うなら、片耳に付けた小さな鈴くらい。
歩くたびに、心地良い音色が辺りに響く。
「小鬼くんたちのお使いかしら?」
「はい、そうです。」
和紙に包まれた綿を渡す。
「ありがとうね、私は鈴(りん)。
隣の弟は、ミサキ。」
ペコリとお辞儀をするミサキさんは、照れたように顔をふいっと背けてしまう。
(姉弟だったんだ…、)