神恋~水神様に恋をした~
そう言えば、ミサキさんを見て思ったけど、頬に引っ掛かれたような傷があるんだよね。
何かに引っ掛かれたのかな。
でも、こう言うのってあまり触れない方が良いって言うし理由聞くのも何かね。
(目、合った…)
「この傷が気になるか?」
小さく頷くとミサキさんは躊躇いもなく傷が付いてしまった理由を教えてくれた。
「この傷は、今は亡き親友に付けられたんだ。
些細な事で喧嘩してこうなったんだ。
そしたら、ソイツ次の日に傷を付けた事を謝ってきて、申し訳なかったって俺と同じ場所に自ら頬に傷を付けたんだ。」
どこか遠い目で語るミサキさんは何だか懐かしい顔をしている。
「まったく、バカな奴だったけど。
あれくらいで申し訳なくなるなんてな。
ま、それもアイツなりの謝罪のつもりだったのかも知れない。」
それから間もなくしてミサキさんの親友は姿を消し、風の噂で「死んだ」のだと分かったそうだ。
本来猫という生き物は、死期が近くなると親愛なる者の傍から離れ孤独という状態で死を迎えるそうだ。
大切な者に自分の死ぬ姿を見せたくはないからだと、楽しかった頃の記憶だけを永遠の想い出としてほしいからだと。
(昔、叔父さんが教えてくれた…)
きっと、その人が姿を消したのも同じ理由だ。
「もともと、体が強い方じゃなかったんだ。」
か弱い妖怪は、重たい病気におかされてしまうケースが高いのか。
初めて知った。
風邪は引かないのに、重たい病気にはかかるんだ。
妖怪にも弱い部分ってあるもんなんだなぁ。
私が思うにミサキさんと同じ傷を付けたのは、謝罪の意味もあったんだろうけど、もっと何か大切な意味な気がする。