神恋~水神様に恋をした~
「そうか、そうかも知れないな。
そこまでは俺自身も気付かなかった。
親友である証、か。だとすればこの傷は、もっと想い出深いものだな。
何だかそれを聞いて、アイツが傍に居てくれて居るような気がする。
ありがとう。」
瞬間、少々強い風が吹く。
風に流れて聞こえてくる小さな鈴の音。
何となく、ミサキさんの親友が鳴らした鈴の音だと思った。
◇◇◇
ミサキさんと鈴さんにお邪魔しましたとお礼を言って屋敷を出たとき。
一匹の猫が私の前を横切った。
それは、妖怪ではなくただの猫。
「ミャー」と甲高い鳴き声をあげて私の前を通り過ぎて行く。
屋敷の角をちょうど曲がろうとしたその猫は一瞬私を見つめて、ペコリと小さくお辞儀をした。
「雪、行くぞ。」
「う、うん…!」
私にお辞儀をした猫の耳には、小さな鈴が付いていて。
(ミサキさんに分かってもらえて良かったね)
頬には、ミサキさんと同じ傷が付いていた。