神恋~水神様に恋をした~
気づけば私は彼の腕の中にいた。
なぜだろう、少しだけ体に電流のようなものがパチパチと走る。
「やっと捕まえた。」
ニタリと笑うあの不気味な笑顔。
誰だっけ。あんな顔するのは、一人しかいないはずなのに。
そして風と共にまた聞こえてくる声。
「そいつは黒狐(くろこ)だ。」
あぁ、黒狐…。
どこかで聞いたことのある名前だ。妖怪に詳しい叔父さんが教えてくれた。
黒狐は、妖怪の闇界の中でも一番邪悪なものとされていて、美味な者を好む。
そうして、代々狙われ続けているのが私たちの家系だと。
特に私の流れる血は、水の匂いが強くとても美味しいらしいから気を付けろと。
「本当に覚えてないんだ?」
「…痛い。」
身体中がズキズキする。立ってるの辛い。
「君の家族を食べたのは俺だよ?」
あぁ、この人は私の家族を滅茶滅茶にした人だ。
家族を、皆食べてしまった人だ。
この人の不気味な笑顔は、あの頃に見た事があったから。
7年後、って言ってたな。遂に私も食べられるのか。
「……たす、けて…」
「ダメダメ、俺がたっぷり味わってあげるよ。」
黒狐の真っ黒な闇が広がった瞳が不気味に輝いた瞬間、