神恋~水神様に恋をした~
「日に日に力が増すなんて、君。本当に不思議な子だよね。」
「私を食べないの?」
「早く食べたいさ。だけど、君には白が付いてるからね。食べるタイミングをいつも見失うよ。」
ため息とともにそんな事を言った黒狐は、続けてこう言った。
「本当はね、家族が身を捧げなくとも君は俺に食われなかったんだよ。」
黒狐は、邪悪なはずなのに、どこか善のような物を少しだけ感じさせた。
「だって、家族があんな事しなくても君は元から白に守られていたんだからね。」
(…え?)
だけど、依頼だって言ってたよ?
ずっと前から私を守ってる?そんなはずは、
「妖怪と契約すると言う事は、嫌でも代償が必要何だよ。君も知ってるでしょ?
白はね、密かに君を守っていた。
君の家族にもバレない程度に自身の匂いをつけてマーキングしたんだ。
それを知らなかった家族はね、自分の身を犠牲にしたんだよ。
まぁ、どのみち代償は必要だったんだ。
白が君に付けていた匂いは薄いから、俺なんかみたいな闇の力が強い妖怪は簡単にその匂いごと食うことが出来るからね。
だから、結果的に家族は死ぬ運命だったって事。」
半分は知っていたけど、もう半分は初耳だ。そんな事、白は言っていなかった。
それにしても、黒狐はなぜこんな事教えてくれたのか理解が出来ない。
「君、本当は気付いてるでしょ?」
「え、」
「白はね、君の事が、」
「そこまでだ。」とどこか威厳のある声が森に響いた。