神恋~水神様に恋をした~
「行くぞ。」と連れていかれた場所は仕立て屋だった。
綺麗な着物がズラリと並ぶ。
「雪、お前はここに住む以上、人間の匂いは多少消さなければならない。」
「うん。」
そう言われ渡されたのは、一級品の着物だった。
こんな素敵な着物…頂けない…。
「茜(あかね)、こいつに着物を着付けてやれ。」
白の命令で姿を現したのは、名前の通り髪の毛も目も茜色の綺麗な女の人だった。
「まぁ、これが噂の雪ちゃん。白様が誰かのために着物を買われるのは初めてですね。」
「よけいだ、さっさと済ませろ。」
…は、初めてなのか。何だかちょっと嬉しい。
着付けてもらうために通された鏡張りのお部屋。
「噂通り、甘い香りねぇ。」
褒めてるのかよく分からないからどういう風に言葉返せば良いのか分からない…。
「この着物はね、あなたのためにとずっと白様がとっておかれた物なのよ。」
「え?」
「あら、あなた鈍感ねぇ。」
ど、鈍感?!
いきなりそんな事言われてもなぁ。
それよりも、私のためにこんな一級品をとっておくなんて。
白って優しいんだな~…。
やっぱり私、彼が好きだぁ~…。
着付けてもらった自分の姿を見て驚いた。
自分じゃないみたいだった。
属に言われる“花魁結び”と呼ばれる帯の結い方は、少々大人びていて。
高校生の私には早いような気もした。
着付けの仕方も教わり、白の所へ戻ると
何だか騒がしかった。