神恋~水神様に恋をした~
『ねぇ、お兄たん。』
いつも私が話しかけてもこちらを見てはくれず、言葉も交わしてくれない。
そんな貴方を知りたいと思った。
『いつもそこで何を見てるの?』
同じものが見たいと思った。
いつも綺麗な空ばかり眺めていて。
『お兄たんは、綺麗な妖怪さんだね!』
その美しい妖怪に出会って1年ほど経ったある日、いつものように話しかけた私を初めて見てくれた。
『お兄たんこっち見た!初めまして!』
相変わらず冷たい目なのに、ほんの少しだけ私を見て優しい微笑みを見せたのを私は見逃さなかった。
『私は雪(ゆき)だよ!』
『知っている。』
初めて話してくれた彼の声は、まるで、汚れのない深い深い水に1滴の雫が滴り落ちるような、
そんな心地良いような、不思議な感覚がした。
澄んだ水を感じさせた。
低く、落ち着いた、冷静な美しい声色。
知らぬ間に恋に落ちていた。