神恋~水神様に恋をした~
よ、妖怪が増えている?!
さっきまでここにいたのは白だけだったのに。
たくさんの妖怪たちは、白見たさに訪れている者が大半だったけれど、人間見たさに訪れた者も多かった。
「雪、帰るぞ。」
淡々と喋る彼は、どこか未知な存在で。
帰るぞの一言で、あんなたくさんの妖怪はサッと通れる道を作る。
その態度が、どれだけ上級なのかがはっきりと身にに染みて分かる。
こんな大勢の視線を浴びても動じない彼は本当に凄いと思う。
屋敷に戻れば、先程のうるささなどまるで嘘だったかのように辺りはしんと静まり帰っていた。
「これをやる。」
部屋で渡されたのは、綺麗な硝子で出来た簪(かんざし)だった。
もともと腰らへんまである私の長い黒髪は、正直結べないと鬱陶しくて、簪と言うプレゼントはとても有り難いモノだった。
「遥か昔から、簪や櫛(くし)等、先の尖った髪飾りは魔除けとして使用されていた。
だから、お前もそれを付けていれば多少の魔除けにはなるだろう。」
お礼を言って受けとる私は、髪を結える事に感謝をしたけれど、
実際に簪何て使ったことがない私はどうすれば良いのか分からない。
「あの、髪…結って欲しいなー…なんちゃって。えへへ。」
こんな冗談何て、聞いてくれないよね!
「自分で結え。」
ですよね!!
しょぼしょぼと鏡の前に座り、髪を結うのに苦戦する私を見て白はため息をもらした。
「出来ないのなら、最初からそう言え。」
私の髪を簡単にまとめあげてしまった白を見て、
やっぱり自分の髪が長いからやるの慣れてるんだろうな。
そう思った。