神恋~水神様に恋をした~
「って、うわーそうきたか。」
「え?」
「簪とかそれズルいよね~。」
何でズルいの?
て言うか、何で白のお家に入り込めちゃうの?
「首輪付けるとか、本当に大切何だね。」
一体何を言っているか分からない。
窓にもたれ掛かる黒狐は、何だか少しだけ切ない顔だった。
「何で、白の家に入れるの?」
「だって俺、昔は上級妖怪だったもん。」
なぜか胸が酷く痛んだ。
黒狐から伝わる何か悲しくて辛いもの。
かつては、白と同様の上級だった黒狐がどうして闇の世界へと踏み込んでしまったのか。
踏み込んでしまったのではなく、もしかして引きずりこまれた……?
――『消えて!貴方なんか嫌い!』
なにこれ、私の記憶じゃない。
この記憶はもっとずっと昔の……、
「俺の記憶を覗いたね。
それ以上踏み込んだら、本当に食べるよ。」
黒狐にとって、見てほしくない記憶の一部を私は見てしまった。
今の目は、本当に食べるつもりだった。
それくらい、消したい嫌な記憶なの?
「昔、俺は上級妖怪だった。
君も祠を見て気付いているだろうけど、昔の俺は白狐だったんだよ。
上級だったからこそ、白の家には行き来が出来るわけ。
厄介でしょ?いつでも君を拐えるってわけ。」
邪悪で危険だと言っていた。
白が言っていたのはこの事か。
どこでも行き来出来てしまうからこそ、常に私の側には護神が必要だと。
拐われないように。
「だけど、今の君はダメだ。
白の匂いが強すぎる。その簪のせいで。」