神恋~水神様に恋をした~


雪は、嫁になれたらと言っていたな。

嫁入りはそう難しいものでもない。
満月の夜に一夜を共に過ごせば良い事だ。


その絶対的条件は、

満月であると言うこと、夜が明くまで共に過ごす事。

そして、必ず果たさなければならない事が口付けを交わすことだ。


丑三つ時と呼ばれる深夜1時から3時までの間に口付け交わすことで、

人間は嫁入りを無事果たすことが出来、晴れて妖怪へと姿を変えることが出来ると言う事だ。


とても容易だ。


だが、それを知らない雪にはこんなことは言わない。

本当に、俺の嫁になりたいと強く願うなら、雪自身に備わっている水の力が教えてくれる事だろう。


雪自身が気付くまで、俺は黙って見守るだけだ。


気持ち良さそうに眠る雪。
あの頃の嫌な夢を見なくなったと言う事は彼女自身が落ち着いてきた証拠だ。


真実を知って、やっと受け入れる事が出来たのだろう。


(そろそろ俺も眠りにつくとしよう。)


「お休み、雪。」


耳元で囁いたこの言葉は、雪には聞こえてはいない。


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