神恋~水神様に恋をした~
白の屋敷から、ほんの少しだけ離れた所に綺麗な桜の木があった。
その下には小さな祠がたててあって。
「これ、何を祀った祠かなぁ。」
桜の木と一緒にあるって事は、桜が好きな妖怪なのかな。
風で落ちる花びらは、地面へとひらひらと落ちて、桜のじゅうたんを作り上げていた。
大きな桜の木に手のひらを置いてみた。
「気持ちが良いな、そなた何者か。」
私の前に立っていたのは、何だか怖そうなお爺さんだった。
「お爺さんは、この桜の妖怪?」
「あぁ、そうだよ。」
植物と水は相性が良いからか、体調が良くないらしいお爺さんは何だか生き生きとしていた。
「木を伝って感じたが、そなたは悲しんでいるみたいだな。」
「あのね聞いてお爺さん。」
一緒に桜の木の上に座る。腕を組んで静かに私の話を聞く姿はどことなく白の姿を感じさせた。
「あのね、白がね。冷たいの。」
「あやつはそう言う者だろう。」
「私が漬けた梅ね、食べてくれないの。」
足をバタつかせて、白の愚痴を言う私をお爺さんは怒りもせず聞いていた。
「そなたは、白をどう思う?」
それを聞いて、何を私に伝えたいのか分からない。
「白は、冷酷だけど、その裏にはどこか温かい感情があると思うんだ。
冷たい人なのに、私の歩幅に合わせて歩いてくれるような優しい人だよ。
私ね、白が大好き!!」
微笑んだお爺さんは、まるで孫を見るかのように私を優しく撫でた。
「あやつと仲良くなれるとは、そなたは凄い素質を持っていそうだ。
早く戻りなさい、白が悲しむぞ。」
私が白と仲が良い?
そんな事あるわけないよ。
だって私の話無視する時あるし、すぐどっか行っちゃうし。
私が居なくなっても、別に悲しんだりしないのに。
何だか、ここにいると時間の流れが早く感じる。
だって、さっきまで明るかったのにもう夕方だ。
「お爺さん、もう戻るね。バイバイ。」
微笑むのを見届けて、私は白のいるお屋敷へ戻った。