神恋~水神様に恋をした~


「お前などにこの苦しさが分かるものか。」


涙を流しながらも大蛇は私の首に噛み付いた。

瞬間に響く声。


「良いか、大蛇。人間を食すと言うことがどういう事か分かるか。」


(白の声だ…、)

あれ、少し息切れしてる?
のは気のせいかな。


「悪いが、そいつを食してもその傷は癒えないぞ。」


「じゃぁ、どうしろと言う!!」


「知るか。ただ、お前のしている事は自殺行為だ。

人間や妖怪を食せば、自ら闇の住人なると言う事。

お前のいつも冷静さはどうした?
それともあれか?

食すよりも先に感情がやられたか?
ならお前はもう助からないなぁ?」


大蛇を煽る白の目は、何だか怒りに満ちているように見えた。


「そいつを離さないと言うのなら、ここでお前を殺めても構わないぞ。」


そう言うと、大蛇は私を離した。
白の言う事、ちゃんと聞くんだ。

大蛇はまた静かに涙を流す。大蛇の流す涙は真っ赤で。

まるで血のようだった。

背中がズキズキと痛む。大蛇の傷の痛みが伝わってくる。


「貴方は、嫌われて何かいない。」


私の言葉で、何かが変われたら、そんな期待から発した言葉だった。


「貴方は、ちゃんと人間たちから愛されてる。

見えなくても、ちゃんと貴方を見てくれてる。

だってもう本当は気付いてるんでしょ?

貴方は、ちゃんと祀られてるし信仰もされてるじゃない。

ほんとは、ずっと前から分かってたくせに。
ほんとは、ずっと前から聞こえてたくせに。」


泣き崩れてしまう大蛇。そして洞窟内から聞こえてくるたくさんの人間たちの明るい声。

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