神恋~水神様に恋をした~
安心した私はまた夢の中へと落ちる。
今日の夢は、何だか私の知らない誰かの記憶。
(妖怪の記憶だ、)
通りすがりのどこかの妖怪の記憶でも知らぬ間に覗いていたんだろうか。
この夢は綺麗な夢なのか、そうでない夢なのかはっきりしない。
―――……
『綺麗な蝶だ。』
『何て美しい…。』
『素敵ね。』
これは、蝶の夢?
褒めているのは人間たち?
美しい森に1匹の素敵な蝶が空を舞っている。
木漏れ日とその蝶はとても相性が良くて、空を飛んでいる蝶も気持ち良さそうだった。
人間たちが森からいなくなると、蝶は本当の姿を現す。
(綺麗な女性だな…)
顔の整った美しい女性は、とても凛としていて本当に素敵だった。
『君の名は何て言うの?』
急に現れた人間に姿を見られて驚いた蝶は、慌てて木の後ろに逃げ隠れる。
『君は美しい妖怪だね。名は?』
『私は、ツクヨと申します。』
『素敵な名前だ。俺は―――と言う。』
ツクヨって言うんだ、可愛らしい名前だな。
この男の人は、ツクヨを気に入っているようだった。
妖怪だと分かっていたし、多分私と同じ見える者。