神恋~水神様に恋をした~
「帰るぞ。」
そして私をそっと抱き上げる白はいつもと変わらぬ無表情で。
感情が読み取れない。
「ツクヨさん、死んじゃったの?」
「お前が何をしても、アイツは救えない。」
そう言うって事は、死んでしまったのか。
白が殺してしまったのか。
だけど、私を助けるためにした事だから殺してしまった事に私は何も言う事が出来ない。
――『愛しておりました。巧様。』
たくみって名前だったんだ。あの男の人。
ツクヨさんが愛したのは、たくみと言う名前だったのか。
「同情はするなと言ったであろう。」
涙を流す私に忠告する白の声色は、まるで安心しろと大丈夫だとでも言っているようで。
好きな人に裏切られても尚、闇の住人になったとしても、あの男の人に対する愛情は変わってなど居なかった。
負の感情があったとしても、何となくだけど、恨みや憎しみと言うより、
愛している人に、人間に騙され、深い心の傷を負ってしまった悲しい蝶のような気がした。
泣く私を見て白は何も言わない。
「妖怪は、冷酷で怖い生き物だって思ってた。
だけど、一番怖い生き物は、人間なのかもしれない。
人間の方がよっぽど冷酷だ。
だってツクヨさん悪くないのに。
人間が悪いのに、何で。」