神恋~水神様に恋をした~
特別、邪悪なものは感じないため別に怪しい者ではないのだと分かった。
それにしても、これは倒れてるのか寝ているのかハッキリしないなぁ。
「あの、誰ですか?」
瞬間起き上がるその妖怪は、何だか可愛らしい顔をしたお兄さんのような。
そんな雰囲気を感じさせた。
「あ、甘い匂い!水の匂いだ!!」
そう叫んで私を抱き締めた彼は、無駄に力が強い。
(い、一体何なの?!)
黒い羽に赤色の目は、幼い頃に叔父さんと読んだある妖怪の本に出てくる何かに似ていた。
「やた、がらす…。」
「僕を知ってるの?!運命だ!!」
運命やら何やら戯言を抜かすこの妖怪は本で読んだのよりもずっと柔らかい人だった。
絵ではけっこう凛々しくて、強そうな妖怪だったけど、けっこう弱そう。
乙の極みとでも言おうか。
とにかく妄想の激しい乙な妖怪だった。