神恋~水神様に恋をした~
「ぴす!!」
あの黒い犬の可愛い鳴き声が聞こえる。
私の腕の中には、もふもふした可愛い角のある子犬が抱かれていた。
「お前、こいつの中で何かを強く願っただろう。」
(強く、願った…?)
あの時の私はこの犬が愛情を求めていたから、居場所を作りたくて、
もうあんな可哀想な事を経験させたくなくて、この子の飼い主になってあげたいって思った。
だから、暗闇で私は愛してあげると叫んだ。
「水の中で苦しむこいつは、お前の願いを受け入れたいと言った。
もう1度愛されたいと、生きることを望んだ。」
この子は、やっぱり愛情を望んでいたんだ。
私にすり寄るこの子犬は、あの不思議な鳴き声で私を呼ぶ。
(私が大切に、あなたを育てるからね)
「これ以上大きくなる事もなければ、危害を加える事はないだろう。
強く願った以上、そいつを愛してやれ。
騒がしくなるが仕方がない。」
この子をペットとして飼うことを許してくれた。
こういう類いのものは、白は嫌いなはずなのに。
(優しい…)
2階へ行ってしまった白はあの窓でお昼寝でもするのだろうか。
白の考えている事は全然理解が出来ない。
だけどこうして私を助けてくれる。
弱った妖怪を助けてくれる。
「あなたの名前は黒ちゃん!」
「ぴす!」と吠えるこの子は、新しい名前を気に入ってくれただろうか。
その答えはすぐに分かった。
短い尻尾をフリフリさせて、私の顔をペロペロ舐める。
(気に入ってくれたか~!!)
「今日から宜しくね!黒ちゃん!」