神恋~水神様に恋をした~
ふと、草の茂みにいる何かが目に入った。
赤色の番傘を手にした小さな女の子。
弱っているのか倒れ込んで、荒い呼吸ばかりを繰り返す。
(……苦しいの、かな?)
その女の子に駆け寄ろうとした瞬間。
「放っておけ、そいつは直に闇の者となる。」
歩いて行ってしまう白を私は追いかけた。
あの子を放っておくのは何だか可哀想な気がするけど、今回は仕方がない。
もう夕方だし、もうすぐ夜がやって来る。
夜に出歩くのは危ないから。
(今回だけは、白の言うことを聞こう)
茂みに倒れ込む女の子を背に私は歩き出した。
◇◇◇
お風呂から上がり、縁側で涼む私と黒ちゃん。
珍しく今日はヤタガラスも居る。
(泊まるのスッゴく白は嫌がってたけどね!)
「軒先から、何だか変な声が聞こえるね。」
ヤタガラスは耳が良いのか、初めに小さな音に気が付いた。
もちろん私には全く聞こえなかった。
扉を開けたヤタガラスと私が見た者は、先程の倒れていた女の子。
(私を追ってきた…?)
「…助けてください。」と小さく震える声で乞うこの子はまるで何かの感情に支配されているようだった。