神恋~水神様に恋をした~
『泣いちゃダメだよサラちゃん。』
『だって意地悪されるから。』
この1つ目小僧の男の子とは親友だった。
自分を助けてくれる、まるでヒーロー。
雨降りの妖怪なのに、雨を上手に降らす事が出来ない。
悔しい。
術をうまく使えなくて妖怪からバカにされる。
悲しい。
いじめられるサラちゃんをあの男の子がいつも助けてくれる。手をさしのべてくれる。
嬉しい。
サラちゃんのいろんな感情が1度に伝わってくる。
『いつもアイツばっか庇ってキモいんだよ!!』
私の代わりに暴力を振るわれる彼を見て、助ける事も出来ない無力な自分。
心が痛い。
蹴られる、殴られる、自分を庇う。
こんな事を続けていたらいつか彼が死んでしまうと怖くなった。
いくら傷付けられても自分を絶対守ってくれた。
苦しい、胸がズキズキする。
嫌な予感は的中した。
彼を蹴る妖怪たちが、彼を殴る妖怪たちが動きをピタリととめた。
慌てて逃げる妖怪の子供たち。
彼はもう2度と、息をする事はなかった。
(何て、酷いことを…、)
動かない彼の名前を必死に呼ぶ。
『ルイくん、ルイくん起きて。』
涙をボロボロ流しながらルイくんと呼ばれる彼をサラちゃんはぎゅっと抱き締めていた。
『ルイくん…!!』