ワケあって、イケメン先生と同居始めます。
「あの兄妹すごいな…。」


小さくなっていく春空たちを見送りながら、先生がポツリと呟いた。


「楽しかったですけどね。」


私が笑って見せると、先生はそっぽを向いてしまった。


「お前って…春空といる時、いい顔で笑うよな…。」


桜を眺め、また呟く。


「嫉妬…ですか…?」


それに近い気持ちを、私はついこの間知った。


「バーカ。んなわけあるか。」


ベシッとデコピンをくらう。


「出会ったときを…思い出しました…。」


走馬灯なのかっ…!これは…。


「あの時に比べたら、こんなの可愛いデコピンだ」


そう言って、また幸香ちゃんと二人で遊びに行ってしまった。


「あーあ。また遠くに行っちゃった。」


いきなり立ち止まって、先生が桜の下で何か口を動かしたのは分かったけど、何を言ったかまでは分からない。だから、





『春空が言った事、本当になるといいな。』







なんて、聞こえるはずが無かった。


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