チョコレートプリンス*きみだけをずっと*
ピッという軽快な音は耳に入ってきた。でも体が全然動かない。
頭の中ではさっき言われた言葉が何度も何度もリピートされて止まらない。
3分という短い時間でホイップクリームの準備をしなくちゃいけないのに……なんだかボーっとする。
そのままあたしは目の前にあるキッチンを見ていた。
―ガンッ
翔斗はボウルを勢いよくワークトップ(作業台)に打ち付けた。
「もういい、やるな。時間の無駄だ。
出ていけ」
「そんな……でも」
大きな音を聞いて初めて、自分が固まっていたことを認識できた。
彼はもうあたしのことなんて視界に入れず、自分の練習をし始めている。
どうしよう…あたし、翔斗に『出ていけ』と言われてしまった。