チョコレートプリンス*きみだけをずっと*
その時ふわっと風が一瞬だけ吹いた。
それと同時に力が抜けて伸ばしていた手が宙に浮いて芝生の上に落ちた。
なんだかその風を浴びた瞬間、負けていたもう一人の自分が大きくなっていったのが分かった。
本当にそれでいいの?
翔斗と一緒に優勝することを目指すんじゃなかったの?
これがもしかしたらあたしのことを助けてくれた翔斗に役に立てるチャンスなんじゃないの?
知らない人に連れて来られたからってずっと被害者な自分でいるの?
ここぞとばかりにグイグイ逃げ出した弱い自分を責めてくる。
本当はどっちを選ばなきゃいけないかってことくらい考えなくても分かっている。
でも、寮の部屋から、翔斗から逃げ出してきてしまったんだからそう簡単に戻れるわけない……。