2択に1つの恋愛
1学期
中学生の頃、私は一人で泣いていた。
幼馴染が2年間外国に留学していなくなって、寂しかったからだ。
古びた遊具がある公園に、私は一人を求めてやってきた。
ブランコに座って幼馴染の事を考えると、またどうしようもなく寂しくなって涙が出た。
「大丈夫? どこか痛いの?」
ふと聞こえた声に、私は慌てて涙をぬぐい、首を横に振りながら顔を上げた。
低いなと思ったその声の持ち主は、日本人ではなかった。
私よりもすごく背が高いその外国人は、私の顔を見ると少し優しく微笑んで隣のブランコに座った。
「・・・悲しいの?」
流ちょうな日本語の綺麗な響きに、私はなんだか安心した。
私がこくりと頷くと、彼は優しく言った。
「一緒に遊ぼうよ」
彼の座るブランコが動き出し、キーコキーコときしむ音がした。
昔から負けず嫌いだった私は、慌ててブランコを漕ぎ出す。
ブランコの次はシーソー。
その次は滑り台。
小学生みたいだと思っても、私は手を抜かなかった。
彼と遊んでいると、悲しくなかった。
・・・夕方になってお別れの時間になると、私はまた泣きそうになった。
彼は何故かありがとうと言って、私に手のひらを見せるように指示した。
彼はポケットから何かを取り出し、手のひらに置いた。
そしてばっと振り返るとものすごいスピードで走り去った。
名前を聞くことができなくて、私は少しがっかりした。
次の日も公園に行ってみたが、彼は来なかった。
彼がくれた黄色のヘアピンは、それからずっと私のお守りとして鞄に付けていた・・・。