2択に1つの恋愛

「えっと、学生証と・・・携帯会員。フリードリンク頼もうかな・・・」


「春、まだ~?」


「うるせー、まだだー」


カラオケに着いて、春が部屋を選ぶことになった。

春は容量が悪いのか、めっちゃ遅い。(本人が言うにはこれが普通だろ、とのこと)


「先に部屋行ってよう」


加奈がそう言ったので、私はすぐに敬礼をした。


「ラジャー☆」


「まっ、待て、俺を置いていくなっ!!」


春が慌てて鞄の中を探る。

中身が少し飛び出して拾う羽目になっているが・・・

急がば回れ、だね。


「何号室だって?」


「25」


「あちゃー。割と遠いなあ・・・」


私たちは壁に描いてある部屋番号に沿って歩く。

途中何人かすれ違うが、ほとんどフリードリンクのお代わりをする人っぽい。


「うんうん。高校生、やっぱ男子は170超えてなきゃね・・・」


「春くんは?」


「168」


「もうすぐじゃん」


「いってないものはいってないのだ」


「はいはい」


部屋を見つけた私たちは、中に入ってマイクと名前がよく分からない機械を取り出す。


「1番手はこの私が――」


「いただき★」


どのジャンルにしようかと迷っているところを加奈にとられた。


「泥棒~っ!!(泣)」


「早い者勝ちというではないか」


「『行くぜ、カラオケ1曲目!』が歌えない~」


「別に1曲目にこだわらなくていいのにね・・・ほい」


≪行くぜ、カラオケ1曲目!≫


「え・・・加奈ってば、そんなに私を大切にしてくれて――」


「なんのこと? 私はただ自分で歌うために入れたから」


「は・・・わ、私も一緒に・・・デュエットで!!」


「シングルで。♪行くぜ、カラオケ1曲目!♪」


「・・・しくしく」


加奈の厳しさに悲しくなりつつも、持ってきたタンバリンを叩く。

そこでようやく春がやってきた。


「二人とも薄情だな! もちっと待ってくれてたっていいだろーに!!」


「春は3番手ね」


≪残酷な天使のメアリー≫


「・・・俺の持ち歌・・・」


「早い者勝ちというではないか(笑)」


「それ、さっきの私のセリフ・・・」


間奏に入って加奈が呟く。

しかし、私は春が歌をそんなに覚えてないのを知っている。


「しゃーねーな! デュエットでも――」


「シングルで」


「・・・・・・」


≪残酷な天使のメアリー≫


「・・・同じ曲を2度連続で入れるなんて・・・」


「うるせえな! お前のせいだろうが! 大体なぁ――」


「あーはいはい」


私はうるさくなりそうな春を無視して、廊下に出た。

春が持ってきた3つのグラスのうち、赤っぽい色のジュースをごくごくと飲み干す。


「ぷはーっ、美味しい♪ これ何のジュースだろ?」


「アセロラ&ストロベリーでしょう?」


・・・びっくりした。

急に後ろから男性に声をかけられるんだもん。

テノールボイスの声の主の顔を見るべく振り返った私は、心臓が1回大きく高鳴りするのを感じた。


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