願わくはキミに


「…アンタ、何で泣いてんの」


彼の声で言えなかった。


彼は消えるように呟き、私を真っ直ぐ見た。

私は掴んでいない方の手を顔に伸ばして頬を触る。

この感触は、私がいつも味わっているもの。



___わたし、泣いてる?



そう気付くと、合図みたいにドクドクと目から涙が溢れる。


ポタッと砂浜に付いた涙は砂に溶けてなくなった。

跡だけがポツポツと残る。



なんで。

どうして。


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