願わくはキミに


…どうして、泣いてるの? 


「…え?」


どんなに拭いても止まることの知らない涙は、頬を伝って風に乗る。


その瞬間、掴んでいた腕が突然放れた。


行き場の無くなった手が無意識に自分の胸へと伸びていた。


ドクドクと音をたてて心臓が鳴る。


なにが、言いたいの____



彼を見るとあの瞳と目があった。

目を反らしたかったけど、彼の目がなんだか「反らさないで」と訴えているみたいで出来なかった。


暫く見つめる形になってしまったけど、涙はスーっと消えていった。


まるで、魔法みたいに。


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