Butterfly
(家にいたら、いろいろ話さなきゃいけない気もするし・・・)


とにもかくにも、昨日のことを、そして彼のことを考えずにいられる、何かをしていたかった。




「まったく・・・今日くらい休めばいいのに」

身支度を終え、玄関先でブーツのファスナーを上げていると、背中越しに心配そうな声が聞こえた。

「平気。今日は好きな教授の授業だから」

努めて明るく言う私に、仕方ない、といった様子で母は「そう」とため息をつく。

「本当に大丈夫だから。授業終わったらすぐに帰るよ」

「・・・わかったわ。千穂は一度決めると頑固だからね。でも無理しないで。何かあったらすぐに電話するのよ」

「うん。大丈夫だよ。・・・じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

変わらずに、母はかなり曇った顔をしてたけど。

私はそれを振り切るように、笑顔で大きく手を振った。






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