Butterfly
きゅっと胸が締め付けられた。

いつもなら、恥ずかしく思う彼がしているノロケ話も、過去の出来事だと思え、今はとても切なかった。

「千穂ちゃん・・・」

そんな私を見て、里佳さんと玲奈さんは心配そうに顔を見合わせた。

そして努めて明るい声で、蒼佑さんの話を続ける。

「もうね、『千穂ちゃんラブ』は岡本さんのキャラみたいだよ。龍平も慣れたって言ってたし」

「千穂ちゃんラブ・・・」


(やっぱり、複雑・・・)


「あまりにも毎日千穂ちゃんの話を聞くからね、龍平も、よく知ってる子みたいな・・・親近感が湧くらしくてさ。

千穂ちゃんの親戚のオジサン気分だとか、わけわかんないこと言ってたよ」

「そ、そうですか・・・」


(私はあまり、龍平さんのことを知らないけど・・・)


「ふふっ。言わないだけで、うちの旦那さんもそうかもしれない。

私が千穂ちゃんの話をするときも、すごく優しい顔で聞いているから」

里佳さんが笑う。

知らないところで、自分のことを話されるのは、なんだかすごく恥ずかしい。


(でも、市谷さんは任意同行のときも私に話しかけてくれたし・・・。本当に、気にかけてくれているのかもしれない)


取り調べが終わった後も、家まで送ってくれた市谷さん。
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