Butterfly
「食べていい?」

「うん。もちろん」

「じゃあ、いただきます」

そのまま大きな口でかぶりつき、ゴクンとそれを飲み込むと、蒼佑さんが笑顔で言った。

「うまい!オレの好きなツナマヨだ」

「うん・・・よかった。コンビニに行くとよく買うって言ってたから」

料理が苦手な私は、おにぎりでさえ、彼に作ったのはこれが初めて。


(でも・・・こんなに喜んでくれるなら、もう少し出来るようにしようかな)


彼の笑顔を見ていると、そんなことを思ったりする。

まるで何もなかったように、私はとても幸せだった。

「・・・じゃあ、残りは後でゆっくり食おうかな」

おにぎりをあっという間にひとつぺろりと完食すると、蒼佑さんは「ごちそうさま」と言って私に笑いかけてくれた。

「うまかった。ありがとう」

「うん・・・」

その言葉がとてもとても嬉しくて、私も笑顔を返すけど。

「・・・」

「・・・」

さっきまでの会話はどこに。

車内は一瞬で、シーンと静かになってしまった。

「・・・あ、えっと」

沈黙を打ち破るように、蒼佑さんが口を開いた。

そしてチラリと私を見ると、軽く咳払いした。

「その・・・ごめん。この前・・・オレ、千穂ちゃんのこと一方的に責めたりして」

取り調べの時のことを言っているのだろう、彼から先に、私に謝ってくれた。
< 125 / 186 >

この作品をシェア

pagetop