Butterfly
やっぱり、もっと感じたい。

彼に触れたくてたまらない。

そしてもっと私に触れてほしいって、心の底から願ってしまった。

それは、ずっと怖かったこと。

だけど今は余計なことは考えず、もっと彼を感じたかった。


(・・・好き・・・)


気持ちが溢れて止まらない。

そして、引き寄せるように彼の首元に手を回した・・・次の瞬間。


ピピピピ・・・。
 

甲高いアラーム音が、突然車内に響きわたった。

二人して、びくりと身体を震わせて、思わず顔を見合わせた。

「・・・」

「今かよ・・・」

残念そうに呟いて、蒼佑さんは額をかいた。

私はなんだか恥ずかしくなり、何も言わずにうつむいた。

「くそー・・・。タイミング悪いなあ」

ブツブツと言いながら、彼は胸ポケットからスマホを取り出しアラーム音をオフにした。

「・・・ごめん。10分て言われてたからね。早めにタイマーかけてたんだ。残り一分」

「遅れたら怖いから」、と蒼佑さんが笑う。

そしてカバンの中にスマホをしまうと、場を取りなすように「そうだ」と言って話題を変えた。

「えっと・・・咲良ちゃんのことだけど、なんか聞いてる?」

「・・・ううん」
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