Butterfly
「いや。こっちとしても状況が変わるならありがたいから」

「うん。よろしくね、千穂ちゃん」

固く語る市谷さんに続き、龍平さんがにこっと私に微笑みかけた。

私が無言で頷くと、市谷さんが取調室のドアを開いて部屋の中に通してくれた。

「・・・千穂ちゃん!」

入るなり、私を見た咲良がガタンと席を立ち上がる。

話しに聞いていた通り、顔色は悪いし、ずいぶんやつれたように見えた。

「ごめんね、迷惑かけて・・・」

咲良の目から、ポロポロ涙が溢れ出す。

こんなつらそうな彼女を見るのは初めてで、私はぎゅっと胸がつぶれた。

部屋には、私に続き市谷さんと龍平さんが入室し、そのままドアが閉められた。

「座って」

促され、私は咲良の向かい側の椅子に座った。

市谷さんたちは、部屋の隅に立ったまま、私と咲良を見守っている。


(緊張するな・・・)


さきほどの、威圧感とは違うけど。

市谷さんと龍平さん、二人の存在感は何とも言えない重さがあって、私はとてもドキドキとした。

「いいよ、話して」

龍平さんに声をかけられ、慌ててはっと頷いた。

一度呼吸を整えて、私は咲良の顔をみた。

「・・・その・・・大変だったね」
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