Butterfly
「そうだなー。ちょっと束縛してる感じだよな」

「重い」

「オレも女だったらおまえはやだわ」

焦る蒼佑さんに、周りのみんながニヤニヤしながら意見する。

彼は「ええっ!?」とショックを受けて、私の方に身体を向けた。

「千穂ちゃん!違うんだ!!オレは別に、束縛したいわけじゃないんだ!!!」

あまりにも必死な形相。

私は思わず笑ってしまった。

「うん。わかるよ。そういうんじゃないって」

「・・・っ!千穂ちゃん!」


(きゃっ)


蒼佑さんが、座っている私の頭を両手でぎゅっと抱きしめた。

私は恥ずかしくて驚いて、そのまま硬直してしまった。

「うわー・・・。私も無理」

どこからか、津島さんの声がした。

私ははっと我に返って、右手で彼の腕をたたいた。

「あの・・・恥ずかしいから、離して・・・」

彼の胸だかお腹に顔をうずめたまま、なんとかそう呟いた。

すると蒼佑さんは「ごめん!」と言って、慌てて私を解放した。

「・・・ふふっ」

それまで、ずっと静かに私たちのやりとりを見守っていた咲良が、突然、楽しそうな声を出す。

向かいに座る彼女を見ると、優しい笑顔が向けられた。

「仲良しだね」
 
「えっ?あっ・・・」

恥ずかしくて、うつむきがちに、私は「うん」と頷いた。

すると咲良は寂しそうに「うらやましいな」と呟いた。
< 159 / 186 >

この作品をシェア

pagetop