Butterfly
ふわりと笑って、咲良はそのまま話を続ける。

「岡本さん、元気?」

「うん。忙しくてあんまりちゃんと会えないんだけど・・・。会うといつも元気そう」

「そっか。千穂ちゃんと会うと、きっと元気がでるんだよ」

からかうように咲良が笑う。

けれどその後、ふっと寂しそうな顔になり、私はドキリと切なくなった。


(悠翔さんのこと、思い出しているのかな)


可月さんも悠翔さんも、まだ刑務所の中にいる。

少しずつ、彼らのバックにいる密売組織のことはわかってきたそうだけど、事件の全容解明には、まだまだ時間がかかるそう。


(結局、悠翔さんの本当の気持ちは確認せずに終わらせたから・・・。咲良も、想いが残っているのかも)


早く、全部忘れることができたらいいのに。

そしてまた、咲良が新しい恋に踏み出すことができたらいいのに。


(・・・あ、そうだ)


思いを巡らせていると、私ははっと蒼佑さんからの頼まれ事を思い出した。

「忘れてた・・・。合コン頼まれてるんだった・・・」

「え?」

「ほら、取り調べのときに言ってたでしょう。龍平さんて・・・明るい感じの刑事さん」

「・・・ああ・・・そういえば」

その反応から察するに、咲良も忘れていたらしい。
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