Butterfly
「あ、心配しないで。ほんとに、すごく・・・優しい人だから」

咲良が、はにかみながらそう言った。

その表情は、彼氏を語る恋する乙女の顔だった。

「うん・・・。それで、いつ会うことになるんだろう?」

「あのね・・・突然なんだけど・・・今日」

「今日!?」

「うん。千穂ちゃん、確かバイトお休みだったかなって思って」

「そうだね、まあ・・・休みだし予定もないけど・・・」


(今日ってなると・・・。うーん・・・ちょっと心の準備ができてない)


「お願い・・・。同じ大学の子連れて来てって、彼に頼まれちゃったから・・・」

悩む私に、咲良は顔の前で手を合わせる。

「彼が働くお店なの。デートもいつもお店なんだけど・・・。『わかった』って、約束しちゃって・・・」


(うーん・・・。そうか・・・)


「ところで・・・どんなお店なの?」

「・・・うん・・・あの・・・いわゆる・・・ホストクラブなの」


(・・・えっ・・・!?)


思わず、口をあんぐり開けてしまった。

咲良から、そんな単語がまさか発せられるとは。
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