Butterfly
あれから。

私は事情聴取を受けるため、警察車両に乗せられた。

運転するのは市谷さんで、行き先はもちろん警察署。

一体なにがどうなっているのか。

私の頭の中は、真っ白なのにずっとわけがわからず混乱していた。

「・・・」

「・・・」

車内は、市谷さんと二人きり。

無言の空間が息苦しくて、私はずっと外を見ていた。

「・・・キミのことは、時々里佳から話を聞いてる」

静寂が続く中、突然、市谷さんが独り言のように声を発した。

私はびくりと肩を震わせ、運転席に目を向けた。

「岡本からも。あいつは仕事以外のことといったら、キミのことしか話さないから」

「えっ・・・あ、す、すみません・・・」

なんだか申し訳なくて、思わず謝罪してしまう。

「いや、別に。キミが謝ることじゃないけど。ただ・・・二人から話を聞く限り、ああいう店に行くタイプだと思わなかったから。正直、少し驚いた」

抑揚のない口調。

市谷さんの表情は、前を向いていてわからない。

「もし、なにか事情があるなら・・・これから、聞かれたことには正直に答えて。誰かをかばおうとか、考えない方がいい」

「え・・・?あ・・・はい・・・」
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