Butterfly
任意同行されるとき、一瞬目が合った彼は、とても苦しそうな顔をしていた。


(自分の彼女がホストクラブにいて・・・そして警察に連れていかれるなんて、かなりショックだったよね・・・)


次に会うのがとても怖い。

蒼佑さんは、どんな顔をして私のことを見るのだろうか。

そして私も、どんな顔をして彼に会えばいいのだろうか。


(彼を裏切るような理由で、お店に行った訳じゃないけど・・・)


でも・・・と今日の経緯を思い出していると、咲良の顔がぱっと浮かんだ。


(・・・そうだ!)


「あの!友達と一緒に来てたんです。私、急にいなくなったりして・・・心配してるかもしれない。連絡しても大丈夫ですか?」

私ははっと身を乗り出して、運転席に近づいた。

咲良はあのまま、悠翔さんとずっと席にいたはずだ。

私がトイレに立って、そのまま連れて行かれたなんて、咲良はきっと知らないでいる。

急に姿を消した私を、咲良が心配している気がした。

「あの・・・」

無言のまま、答えを悩んでいるような市谷さんに、私は声をかけるけど。
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