Butterfly
「・・・」

「『あの時初めて会いました』とか、わかりやすい嘘はつかないでね。ずいぶん親しげだったでしょう」


(どうしよう・・・)


「元彼です」って、素直に言うべきところだろうか。

市谷さんには、聞かれたことには正直に、答えるようにと言われているけど。

辛い思い出を伴った、忘れてしまいたい昔の恋人。

彼氏である蒼佑さんの前で、可月さんのことを話したくはない。


(しかも可月さんはさっき逮捕された犯罪者で・・・蒼佑さんは警察官・・・)


過去と現在の両方が、私を同時に苦しめる。

口を噤んだままでいると、津島さんはため息をつく。

「・・・まあいいわ。調べればいつかはわかると思うけど。

時間がもったいないから、とりあえず違うところから聞こうかな。羽鳥咲良さん、友達だよね?」

咲良の名前に、私ははっと表情を変えた。

それを肯定と取った津島さんは、そのまま質問を続けていった。

「いつからの知り合い?」

「・・・大学に入ってからです」
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