Butterfly
「・・・あなたはどこまで知ってるのかな」

津島さんが、トン、と人差し指で机をたたいた。

その瞬間、机の上の全てのものが、ヒンヤリと凍りついたような、とても冷たい感覚がした。

「羽鳥さんも事情聴取を受けてるの。市谷さんから何か聞いてる?」

「はい・・・。でも、私と同じように任意同行されたって・・・それだけです」

「ふうん・・・。そっか。じゃあ、私が代わりに説明するわね。

私たちはね、羽鳥さんが貴見を支えてたって・・・金銭的に援助してたのは、彼女だって思ってるの」

「え・・・?」

「可月と同じよ。あの後、違法薬物取締法違反で貴見も逮捕されてるの。

可月と貴見、二人は仲間なのよ。どっから仕入れたのか・・・あの店で、クスリを自分たちの客の女の子に裏で売りつけていたの。

最初は『サプリメントだ』とか言ってタダであげて・・・『キレイになるから』って、必ず飲むように説明してね。

で、彼らを好きな女の子は、従順にもそれを飲み続けた。

それで・・・薬物中毒だね。確実に飲まなきゃいられないっていう状態にさせてしまうの。そこからは高額で、女の子たちにクスリを売りつけるのよ」


(そんなことを、可月さんたちが・・・)


ショックだった。

仮にも、昔付き合っていた人。

確かに、彼女として辛い思いもしたけれど、この出来事は、違った意味でショックだった。
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