櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
...
学校の裏庭に回ったシェイラとルミアの二人。
相変わらず何だか怒ってるシェイラに、ルミアは気まずそうに口を尖らせた。
何で怒ってるかも分からないし、その上シェイラと会ったのは数週間ぶり。
ちょうど約束にシェイラが遅れてすれ違いになった日以来だ。
それまで三日に一度ぐらいのペースで会っていたのに急に会えなくなったのは寂しかったが、ルミア自身任務で忙しかったこともあり、国王のシルベスターがいなくて仕事が大変なのだろうと会うことを諦めていた。
(やっと会えたから嬉しかったのに...)
叱られた子犬の様にしゅんとするルミア。
垂れた耳が見えるようだ。
シェイラはその姿を見て、小さくため息を付いた。
「ルミ」
「...はい」
「俺が何で怒ってるか分かる?」
「...いいえ」
「だろうね」
どうせ分かってなんていないんだ
こっちがどんなに君を好いているかも
どれだけ君を独占したいと思っているかも
『好き』の大きさがまるで違う。
たった数週間会えないだけで、
別の男が君と一緒に居るのを見るだけで、
こんなにも俺は苦しくなるのに、君は平気な顔で笑うんだ
「...辛いな」
「え、...」
こっちがこんなに嫉妬に狂いそうになっても、彼女は俺の気持ちに気付いてくれない
それでも俺はどこまでもルミのことが好きなんだ。
「ルミ、一つ聞いていい?」
「は、はい」
「あの青髪の...ユウって男とは何もないんだよね?」
「ユウ?何って、彼はただの任務の保護対象者ですよ。そりゃあ一応は生徒だし苦しんでいたから助けてあげたいって色んなことをしたけど、別に特別な関係とか何か訳ありとか、そんなことは一切ありません」
ただ、
「ただ?」
「魔法が使えなくなってた彼が、昔のシェイラさんと重なったんです」
その返答にシェイラは目を丸くする。
「...どうにかして助けられたらと、思いました。その為に私にできることなら何でもしようと」
でも別に変な関係ではないです!と必死で弁解するルミアにシェイラはやっと小さく笑った。