櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
少し安心したシェイラは続いて尋ねる。
「じゃあユウって男の事、好きじゃない?」
きっと望んだ答えを言ってくれるだろうと期待していたシェイラは、次に発せられる彼女の答えに固まる事になる。
「え、好きですよ」
「え゛」
「好きなの!?そ、その、恋愛的な意味で!?」
「...?恋愛的な意味の好きかは分かんないです。みんな好きですから。シェイラさんも兄さんも特殊部隊の皆もここの生徒もみんな好きです」
「...なるほどね。問題点は分かった」
シェイラは頭を抱え、困ったように笑った。
要は、彼女の中では違いが明確化されていないのだ。
どの種類の好きで、どの程度の大きさの好きなのかが。
「はあ、苦労しそうだな...」
「何にですか?」
「...いやぁ、別に」
肩を落とし、サクラの木を背に座り込んだシェイラ。
その隣にルミアもそっと腰を下ろす。
不安そうに見上げる彼女。
そうりゃあもう可愛らしい上目づかいに心揺さぶられながら、黄金の瞳を細めて笑った。
「...もう怒ってないから、そんな顔するなよ」
そう言うと、ルミアはほっとしたように笑う。
そして、こてんとシェイラの肩に寄りかかった。
ドキリとシェイラの胸が鳴る。
「...会いたかったです」
加えて、その一言が胸の高鳴りに追い打ちをかけた。
「最後はすれ違いだったし、その後も会えないし...早く任務を終わらせてシェイラさんに会いたかった。今日は、会えてすごく、すっごく嬉しかったです」
「~~ッ!!そ、それは...ずるいなあ...」
シェイラは真っ赤になった顔を両手で覆い隠す。
こんなのズル過ぎる。
さっきまでとことん人を不安にさせといて、この仕打ち。
骨抜きにされるとこはこの事かとシェイラは身をもって体感した。
「なあ、ルミ」
「はい」
「二つほどお願いをしたいんですが」
「何ですか?」
「一つ目。人の前で無防備な格好をしないこと」
「?はい」
「...分かってないだろ」
呆れた様なシェイラの目にキョトンとするルミア。
これについては今後じっくり説明が必要だなと思いながら、話を続ける。
「二つ目」
「はい」
深い藍色の瞳とキラキラの黄金の瞳をぱちくりさせるルミア。
そんな彼女の頭を撫でながらシェイラはにっこり笑う。
そして一言、
「デートをしましょう」
シェイラはそう、言ったのだった。