櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
「それにしても殿下も人が悪い、ルミア様をこんなに悩ませるなんて。この際きつく言っておくべきでしょうかね」
「あんたはどの目線で話してんだか...でも確かにこんなに参っているのを見るとちょっとかわいそうに見えるわね。補佐官になるために必要な教員免許とれたってあんなに喜んでたのに」
ルミアは極秘任務の傍ら補佐官になるため教員免許をとろうとしていた。
任務と並行してだったが無事に実習期間を終え、免許をとれたことを嬉しそうにアネルマに報告していた彼女を思い出して小さく息を吐く。
「ねえローグ、貴女の星読みの力で助けられないの?」
「馬鹿言わないでください。そう頻繁に未来を読んでは世界の均衡が崩れてしまいます。私の力は必要となったときに必要な方の為に使うのです。それに未来など見ずともルミア様の将来に不穏な影など一切感じませんし」
「ふーん。でもちょっと気の毒よね、こんなに悩んでる彼女をほっとくわけにもいかないし」
「じゃあこんなのどうですか?私たちでルミア様のデートのサポートをするんです」
「サポート?」
「はい!ルミア様は根っからの騎士です。お兄様と似て見目麗しい容姿でありながら普段より戦闘に興じているせいで女性っ気がゼロに等しい。きっとお出かけ用の女の子らしい服装も持ってないことでしょう。そこで私たちの出番です!彼女をどこから見ても最高の女性に見えるよう仕立てるんです!!」
確かに、ルミアは物心つく前から騎士なる為特訓の毎日だった。
そのせいか今も暇さえあれば訓練に勤しみ、外に出ることはめったにない。
故に身につけている服は特殊部隊の騎士が共通して着る動きやすい戦闘服ばかり。
女らしい服装など見たことがなかった。
ローグにとってみれば、ルミアを着飾るチャンスぐらいに思っているのだろうが悪い話ではない。
ルミアとシェイラのことだ。
放っておいたらいつくっつくか分かったもんじゃない。
恋に奥手なあのシェイラが掴んだ絶好の機会、無駄にする手はないだろう。
「そうね。ここは私達が一肌脱いでやりますか」
「はいっ!!」
この際ルミアという完璧すぎる素材を開花させましょう!と意気込む二人の横で当の本人はすやすやと寝息を立てていた。