櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ





 ◆





 次の日






 朝早く、国王シルベスターと療養の為長く祖国に帰っていた妻フランツィスカ、そして極秘任務に出ていた特殊部隊の騎士達が凱旋帰国した。



 大正門から王宮に続く大通りをシルベスターを先頭に衛兵たちが列を作って歩く。



 国民の多くが大通りに集まりシルベスターと特殊部隊の騎士達に歓声を送る。



 一同が王宮前につくとそこにはオーリングとジンノを従えたシェイラがにっこり笑みを浮かべていた。




「おかえりなさい、兄上」


「ただいまシェイラ!仕事押し付けて悪かったな!こっちは楽しかったよ!!」


「...聞かなくても分かります。嫌味なぐらいツヤツヤされてますね」



 久し振りの休暇をフランツィスカと過ごせたことがよほど嬉しかったのかにっこにこのシルベスターと、対照的に仕事を押し付けられた上ルミアとの件で眠れなかった若干やつれ気味のシェイラの間にフランツィスカが割り込む。



 そして、ぎゅうっとシェイラに抱き付いた。



 驚いたシェイラは目を丸くして固まる。



「うわっ!フ、フランツィスカさん?」



「フランでいいわ。貴方がセレシェイラね!初めまして!!会うのを楽しみにしてたの!」




 実のところフランツィスカとシェイラは面識がない。



 シェイラが長く影の部屋に身を隠していた間に二人は結婚し、ちょうど表の世界に出てきた頃には祖国に療養に出ていてたからだ。



 お互いに存在は知っていたが面と向かって顔を剥き合わせるのはこれが初めて。




「俺の事はシェイラでいいです」



「分かったわ。ふふっ私、弟が欲しかったの!よろしくね、シェイラ君!」




 そう言ってハグをする二人を後から見つめ、シルベスターは幸せそうに笑う。



 シルベスターが心から望んだ幸せな家族の形がそこにはあった。





 一方、そう穏やかにはいかないのが特殊部隊



 問題児が予想通りの問題行動を起こしたからに他ならない。



 当事者にもその意識はあるようで、



 シェイラの隣で鬼の形相をして仁王立ちしているジンノを見た瞬間、アイゼンはびくりと肩をゆらしてこっそりと逃げ出そうとする。



 それを許さんとばかりに「お゛い」と引く声が響く。



「どこにいくのかな、そこのオヤジは」



「え、...だ、ダレのコトカナーー」


「てめえだよ!!!」



「ひいっ!!」



 ジンノの怒鳴り声にびくびくするアイゼン。



 目の端でアポロ達に助けを求めるが、全員が「あきらめろ」と満場一致。



 絶望に顔を真っ青にしたアイゼンの首根っこを捕まえ、ずりずりとどこかに連れていくジンノ。



 恐怖で涙をにじませたアイゼンの顔をみて、今後彼の身に起こることを想い、そこにいた騎士や兵士たちは心の底から憐れむ。



 やはり隊長アイゼンにとっても、ジンノは魔王に代わりなかったのであった。




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