櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ






 改めて二人は顔を突き合わせる。




 顔の赤みが引かないシェイラに対し、ルミアも心なしか頬が赤らんでいるようだ。



 そんな、もじもじとする二人にやきもきする影が窓の外にふたつ。



「ちょっ、何やってんの。男なら腹くくりなさいよ」


「ルミア様に見とれてるんですね。厚かましい!」



 アネルマとローグである。



 悩むルミアをデート仕様に変身させた二人は、気になって仕方がなく、ここまでついてきたのだ。



「まあ、見惚れて当然ですけどね。今日のルミア様は完璧以外の何ものでもありません!」



 ローグが絶賛するその姿は



 清楚かつ、やや色っぽさを加えた化粧


 長く伸びた柔らかな髪は見事に編み込まれ、ユウから貰った薔薇のバレッタがよく映える。


肩と胸元が大きく開いた白のオフショルダーに、同じく白のふわふわとした超ミニのショートパンツ。


 そこからすらりと伸びた長い真っ白な足元には瑠璃色のピンヒール。




 二人が厳選したその服装に包まれた彼女は、どこからどう見ても非の打ちどころのない出来栄えだった。



 一方、彼女のペアであるシェイラもなかなかのルックス。



 普段の王族らしいゆったりとした豪勢な服装とは打って変わり、身体のラインがしっかりと分かる格好だ。


 肩程までに伸びた癖のある金髪は高価なリボンでくくられ、左耳には黒曜のイヤリングがきらりと光る。


 珍しく黒で統一されたその姿は、上品な中にカジュアルさもあってなかなかおしゃれ。


 しかし、



「...あの格好、シェイラらしくないわ」と、アネルマは怪訝な表情。



 ローグも同感なようで、怪しむ二人は少し考え込むと頷き、お互い反対方向に、第三校舎の壁伝いに走り始めた。


 ぐるりとまわり、丁度反対側で二人が見つけたのは...



「げ、」


「まじかよ」




「やっぱり。あんたらか!!」




 そこにはローグやアネルマと同じように窓から二人を覗き込む男たちが。



 そう、それは今日任務から帰って来たばかりの特殊部隊の騎士達だった。 






< 108 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop