櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ
次の瞬間、ルミアの身体が光始めた
何をやっているのか分からないイーリスは突然発光し始めたルミアにぎょっとする
光の魔力を使った自己治癒魔法だ、
痛めた腰や体の傷がそれによって癒えていく。
そして一分も経たないうちに、ルミアはすっかり元気になった。
「よしっ!次はイーリス、ほらこっちに来て」
「え、え、ええ。ちょッ」
ルミアに引き寄せられ、半ば強制的に膝枕をされたイーリスは、その後時間をかけ丁寧に治療され、傷は何とか塞がった。
人狼の『毒』のせいで完全にとはいかなかったが。
「ごめんね、傷...残っちゃった...」
頬に残った大きな獣傷。
それに触れ、申し訳なさそうな顔でそう言うと
イーリスはいいんだ、と言って笑った。
それから少し休んだイーリスとルミアは別荘に向かい森の中を歩き続けた。
その道中、イーリスは尋ねる。
「どうして、追いかけてきたの...」と。
その問にルミアは至極当たり前のように答えた。
「そりゃあ、家族が急にいなくなったら探すでしょ?」
イーリスはその返答に思わず間抜けな顔をして立ち止まる。
それに気づき、振り返ったルミアはやはり当然と言いたげな顔で。
「今日王都に帰るって言ったのに居ないから...」
「そ、それは...ルミだけの、話なんじゃ...」
「何言ってるの?イーリスも一緒だよ?あ、もしかして...一緒に行きたくなかった?森に残りたかったの?」
不安そうな顔でそんなことを言うもんだから、イーリスは慌てて否定する。
「そんなことないっ、俺も、ルミと一緒に居たいッ..でも....一緒に、居ていいの?俺、家族じゃ...」
家族じゃない
そう言いかけたと分かったルミアは、イーリスに向き合ってゆっくり話し始める。
「前に教えたよね。家族っていうのは母親と父親と、血と言う確かなもので繋がれた尊いものだって。...でもね、私はそれだけじゃないと思うの。だって世の中には血なんか繋がってなくても家族である人たちはたくさんいる」
種族が違っても
生まれた場所が違って、
親が違っても
家族にはなれる