櫻の王子と雪の騎士 Ⅲ






「私には兄さんがいて、その人がよく言って聞かせてくれたの。家族っていうのは特別な絆があればそれだけでいいんだって。愛していればそれだけでいいって...私はイーリスの事が特別だし大好きだし、これからも一緒に居たい。私はもうずっと、家族だと思ってる。イーリスは、...」




 イーリスは違うの



 そう言いかけ、ルミアは固まる。


 イーリスが泣いてたからだ


 静かに、その翡翠色の瞳から溢れて零れる様に流れていく。



「イーリス...どうして泣いてるの?泣かないで...」



 戸惑いながらも袖で涙を拭いてやる。


 彼はありがとう、と小さな声で呟き、しばらく無言で泣いた。




 そして二人は並んで、帰るべき場所に向かって歩く。


 手をつなぎ、ずっと一緒だと誓って




 森を抜けると父のリンドブルムがそわそわしながらユニコーンのノアと待っていた。


 心配のあまり涙と鼻水でぐじゅぐじゅになった顔で「ああ!ルミっ私の女神っ!!心配したぞ!!」と彼女に抱き付いていた。




 ルミがイーリスを心配したように。




 その時ようやく何かが分かったように、すとんと胸の内に落ちついた。




 ああそうか、


 血が繋がってないからとか


 本当の家族じゃないからとか関係なかったんだ




 その人の為にどれだけ心配して心を痛めて


 巨大な敵にだって立ち向かっていけるかが大切なんだ




 それがきっと、彼女が言っていたことの意味


 愛であり、絆であり、家族を本当に繋ぐものだと




 そしてそれを、自分も持っている




(彼女の家族でいていいんだ...)



 イーリスはほっと安心したように笑ったのだった。




 

 ◇





 その後、


 少し遅くなってしまったが皆で王都に向かった




 リンドブルムが王都に入るための通行書を準備してくれていたので関所もスムーズに通過


 無事に王都に帰ることが出来た




 その人の夜は、ぐっすり眠った。


 大きなベットで彼女と一緒に深い深い眠りの中に。




 ジンノがいればけしてそんな事許さなかっただろうが


 たまたま彼は留守。


 命拾いしたイーリスだったが、次の日の朝早くルミアに会いたくてダッシュで帰ってきたジンノにその現場を発見され、地獄を見ることになるのはまた別の話。






 ◇





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